ここがサイハテの。

30代女子

「大霊界」ってありましたね。あの世は皆の心の中に。

知り合いが亡くなった。あんなに若かったのに…とかみんなが言ってる間に、私はあまり悲しいという気持ちではなかった。

お通夜にいっても実感がないだけ、というか、何か本当に、また飲もうという電話がきたりするんじゃないかと、どこかで思ってて、しんみりした顔をしてること自体が何がおかしくて、うっかり普通に笑いそうになるのを我慢していた。

死んだのは、死んだとしても、よく、お笑いとかであるように、みんなに見えてなくて、故人が白装束で、「おい!俺はここにいるよ!」みたいにフワフワしてて、泣いてるみんなを茶化したりするのを思い出していた。

 

「最後に故人にあいさつを…」とか言われて、のぞきにいった。

その時は、見るのが少し怖かった、台があって、そこに一段上らないと見えないようになっている。私の番がきた。エンバーミングというのか、人形の様な顔だった。

これは、あの人じゃなくて、人形で、またお清めのお寿司とかつついてたら、普通に会場に入ってくるじゃないかと思った。

 

みんなが思い出話をするのか、二軒目に繰り出すのを後目に、私はさっさとタクシーに乗った。私はあの上司に可愛がられていた。

家に帰ると、ドアの前に何か落ちていて、いつもは見ないのになぜか屈んで確認したら、それは、あの人が良く着ていた服の柄と同じ色の虫だった。

来たのか。

 

私は家に入って、塩をまいた。